好きなものつめあわせ

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Still Breathing感想 - 生死の境で「まだ生きている」あなたへ

Green day

※歌詞/メロディー/編曲/その他 の4つの視点から、曲の感想を書く…はずでしたが、歌詞があまりにも心にぶっ刺さったので、今回は歌詞にフォーカスします。

※あくまで個人の感想です。

 

[歌詞]

この曲の主人公はGreen Dayのフロントマン・Billie Joe Armstrong氏です、おそらく。彼は自分の頭や心にあるものを歌詞に落とし込む楽曲製作スタイルですが、Still Breathingも例外ではないでしょう。

 

彼がね、歌うんですよ。体の底まで貫くような苦しみを経験しても、それに自分の世界を破壊されても、俺は前を向こうとすると。前を向けないかもしれない危うさを自覚しながら、前を向く恐怖も感じながら、そのたびに「俺はまだ生きている」と確かめて、目線を前に戻すと。こんなの泣くに決まっているじゃないですか!ばか!

 

Verse1の歌詞には、生と死の境目に立っている人達や、そうでなくとも「あちら側」へ簡単に行ってしまいかねない人達がたくさん登場します。以下、一部抜粋して例を挙げます(意訳含む)

Asoldier coming home for the first time(戦争での兵役を終えて、帰って来た兵士)

A junkie tying off for the last time(打てば死ぬのに、麻薬の注射をするために腕を縛るドラッグ中毒者)

A loser that’s betting on his last dime(持ち金最後の10セントを賭ける、負け犬のギャンブル中毒者)

 

Billie Joe氏は、そのすべてに”I’m like(俺は~みたいだ)”と付けています。つまり彼は「俺もこの人たちも同じだ。すぐ隣に死や闇がある」と歌っているんですね。

 I’m like a soldier coming home for the first time

 I’m like a junkie tying off for the last time

 I’m like a loser that’s betting on his last dime

そしてそれに続く”Oh I’m still alive(ああ、俺はまだ生きている)”で、彼は自分が「あちら側」に行っていないことを再確認するんです。

 

でも「こちら側」も悲惨で、彼にとっては“wreckage”(破壊されまくった後の残骸)でしかない。なのに、そんな苦しみの象徴でしかない残骸の山でも、彼は”shine a light into the wreckage, so far away away”(できるだけ遠くまで光で照らすんだ)とVerse2で歌う。なぜか?その答は以下のHookで明示されます。

Cause I’m still breathing(俺はまだ息をしているから)

Cause I’m still breathing on my own(俺はまだ自力で呼吸できているから)

My head’s above the rain and roses(悲しみも愛も受けとめて)

Making my way away(ここから離れるための道を)

Making my way to you(君へと続く道を俺は進むよ)※1

 

はい、この歌詞で私の涙腺は崩壊しましたよ。だってこれ、「死」に相当近い状態ですよ。(自分の呼吸を意識しないと、自分の生存確認ができないギリギリの状態)それでも「生」の方向へ行こうと・前に進もうとあがくんですよ。あがいた先にいる「君」に向かうために…って、泣かないのは無理でしょうよ!ばかばか!(2回目)

 

この「君」は特定の「誰か」かもしれないし、自分を支えてくれる「何か」という線もあり得ますし、「もう1人の自分」を指す可能性も考えられます。Billie Joe氏は解釈を聴く側に委ねてくれていると考えていいでしょう。なんにせよ、自分を「こちら側」にとどめてくれる誰か/何かには違いありません。

 

さらに、私の喉の奥をしめつける歌詞が終盤(Bridge)で出てきます。

As I walked out on the ledge(俺がビルのへりに足を踏み出したように)

Are you scared to death to live?(お前、生きるのが死ぬほど怖いのか?)

 

1行目は、自殺未遂を示唆しています。高層ビルから飛び降りようとして、屋上の端にあるへりに立った状況ですね(Lyric videoでもそれが描かれています)。そこから空中に踏み出してしまえば簡単に死ぬことができる。そう、生と死を分ける距離はその「1歩」でしかありません。

 

そして2行目。そこまで生と死が近いと、生きることが死ぬほど怖いし、死ぬことが生きるのと同じくらい怖くなるんですよ。Billie Joe氏に「お前もそうか?」と問われて、Noと言えない自分に気づかされるんですよ。死ぬのは怖いけど、この現実を生きるのも怖い。本来は、死ぬことの方がずっと怖いはずなのに。

 

この部分を聴くたびに色々な感情がぐちゃっと混ざって、私は喉元をつかまれたような気持ちになります。普段は普通に暮らしている私でも、死までの距離はほんのわずかと再認識させられるから。生きることと死ぬことのどちらがより怖いか、私も時々わからなくなるから。

そして、Billie Joe氏もそうだということに、彼がそれを歌ってくれたことに、少しだけ救われるんです。

 

そして曲の最後。ここでも、やっぱり彼は”Cause I’m still breathing”と繰り返し歌います。生と死のギリギリの境界線で、怯えながら踏み出す一歩は「生」の方なんだと、何度も宣言するかのように。

誰が何と言おうと、その一歩が意味する決意を、私は美しいと思うんです。

 

[その他]

※1:この ”Make my way”は、既に出来上がった道を進むのではなく、道のないところに自分で道を作って/道を見つけながら進んで行くニュアンスを含みます。他の歌詞と組み合わせて考えると、個人的には「ガレキと残骸の山に足を取られつつ、苦労しながら進む」イメージが浮かびますね。

 

編曲について少しだけ…。Green Dayらしい非常にシンプルで大好きな編曲です。リズムも4分の4拍子で、コード進行もひねった部分はありません。IntroからVerse1まではギター音のみで、Verse2でベースとドラムが重なり、そしてHookでGreen Day節が炸裂!お家芸のキャッチーなコードとメロディーで、曲が耳にスッと入って来ます。この編曲のおかげで、歌詞はなかなか重苦しい内容ながら、最後まで聴ける曲になっているんでしょうね。(この歌詞で沈痛なコードやバラードだったら、ちょっと精神的にツラかったかも…)

 

最後に蛇足。個人的に、この曲で「Billie Joe氏は、やさしい歌詞を紡ぐようになったなあ」と感じました。DookieやInsomniacの頃からは考えられないくらいに。