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Yet To Come (The Most Beautiful Moment)感想① - その物語には乗れないので、次に期待します

BTS (방탄소년단) 'Yet To Come (The Most Beautiful Moment)' Official MV - YouTube

 

※あくまで一個人の感想です(解釈、考察、妄想も多分に含みます)

※2022年の찐 방탄회식(真 防弾会食)を観る前に書いた感想です。

※"Yet To Come (The Most Beautiful Moment)"について、ネガティブな感想が書かれています。ご覧になりたくない方は、このページは閉じて回れ右してくださいね!

 

 

 

まずは曲だけ聴きました。

そして、楽曲として体系的な感想を書くほどのポイントがあまり見当たらなかったので(個人的な意見ですよ)、MVを観てみました。この曲は、MVの物語と重ねることで真価を発揮するのかな?と期待しまして。

 

なので、ここからは曲とMVの感想がごちゃ混ぜになります。総じて「うーん」と言う印象なんですけども…。

 

まずは結論から。

1:曲のメッセージが非常に内向き(特定の層向け)なので、その層に該当しない私には響かない。

2:これまでのBTSの活動を思い出すに、歌詞と合っていない気がする。ゆえに曲自体に説得力を感じない。

 

では1から行きましょう。

何でしょうね…花様年華という戦略およびコンセプトを清算したいのであろうことは十分伝わって来ました。

MVで「これでもか」と念を押すように、花様年華期をオマージュした画面の構図・セット・衣装・小道具・メンバーの演技を並べ立ててますからね。かつメンバー自身が、自己に重ねられた花様年華からの卒業を歌ってますもんね。

 

花様年華シリーズを通して、BTSの人気は加速度的に上昇して行った。その過程を経て「最高」と呼ばれ「なじめない修飾語」を得た。自分達が求めるものは「世界の期待」でも「最高と言う基準のためのstep」でも「冠、トロフィー」でもなく、「夢と希望を抱いて前に進む」こと。今、その原点に戻る(bank to one)と。

 

なるほど、非常に内向きなメッセージだなと感じました。花様年華を通じたBTSのサクセスストーリーや、トップアイドルの地位を得た後もそれに縛られ続けてきた歴史、それに付随してチームBTSに(メンバー含め)葛藤や戸惑いがあったであろうこと。これらを知っている&かつ「その物語におけるBTS」を好きでないと、響かない歌詞のように思えてなりません。

 

ゆえに、その「好き」を持たない聴き手には届きづらい。「未来に進むために、今手にしているものを捨てる」と言う普遍的なテーマでありながら、普遍的に聴かれるタフさを持ってない。その理由は、曲の作り手が聴き手を先述の「好き」を持つ層に徹底してターゲティングしているゆえでしょう。

 

私とあなた」の間でだけ通じればよく、その関係性の外側の「誰か」には届かなくて構わない曲なんでしょうね。それは悪いことではなくて、「あなた」から好かれることがビジネスの根幹にあるアイドルとして、むしろ正しいとすら感じます(上顧客である「あなた」をとても大切にしているわけですから)

 

が、私の琴線には触れませんでした。花様年華期&その最中/後のアレコレは知っていますが…私は「その物語におけるBTS」を強く好きなわけではないし、特段思い入れもありません。ゆえに花様年華からの決別を歌われても、それ以上でも以下でもなく、「そうですか」で終了です。

 

余談ですが、MVもあまりにも手がかかっていないような気がするんですが…。花様年華期を徹底的にオマージュしてはいますけど、それに大して意味が感じられません(オマージュ自体が目的であることを除いて)。

過去と現在で、類似の/多少変化を加えた構図・セット・衣装・小道具・演技を重ねていても、本当にそれだけ。このオマージュによって、「花様年華の物語がこう閉じられる」とか「過去のストーリーにこんな視点が加わって、終焉につながる」とか…ありませんよね?

 

例えば、過去の作品とこのMVでは「V氏とJIN氏で目隠しする/される」が逆転していますが、それは花様年華の物語やメッセージとして何を意味しているんでしょうか?

もしこの逆転が何かを象徴しているならば…残念ながらそれは伝わって来ないので、表現力に難ありと言わざるをえません。一方、何も物語っていないのであれば…それは過去の作品を多少変えて「昇華してるっぽく見せている」に過ぎません。

 

Butterでは曲の主題を見事に映像化し、細部まで演出が光るMVを創り出したチームBTSですが…この曲では一体何が起きたのかと眉間にシワが寄ってしまいます。

 

 

閑話休題。そして2です。

うーん…歌っていることと実際のBTSの表立った行動が、フィットしていないように思うんですよね…。いや「懸命に過ごして来た」「息が切れるほど」等の歌詞はまさにその通りでしょうけど…。私が特に強い違和感を感じるのはラップパートなんですよね。

 

「ただ音楽が好きなんだ」

「We ain't about it この世界の期待」

「王冠と花、数多くのトロフィー We ain't about it」

 

花様年華期に限らず、これまでずっと「王冠と花、数多くのトロフィー」を大きなモチベーションの1つにして、音楽も音楽以外の活動も必死にやって来たように見えますが。

そこに富や名声や名誉を求める野心が無かったとでも言うんでしょうか。思わず「ご冗談ですよね?」と半笑いが出そうになりました。まあ、もう全て手に入れた今だからこそ「We ain't about it」と歌えるんでしょうけど。

 

 

「ただ音楽が好きなんだ」

そうですか。ならばあれだけグラミー賞を欲しがっていたのは何だったのだろう?と首をかしげざるをえません。ただ音楽が好きなら、賞なんて気にせず音楽をやっていれば良かったのでは…?

 

「(賞を獲るために)力を貸して」と、メンバー自身の口からはっきりARMYにお願いしたこと、忘れてはいませんよね…?

歌詞の全てが英語の曲・ラップパートがゼロの曲・ほぼ外注プロデュースの曲が連続したことと、賞狙いの戦略が無関係とは思っていませんよ…?

自身の音楽に不可欠の要素…母国語・ラップ・(多少は)自作であることを捨ててまで、権威を象徴するグラミー賞つまりは「王冠」が欲しかったんでしょう?

 

 

「We ain't about it この世界の期待」

なるほど。直近の例で言えば、ホワイトハウス訪問との矛盾を感じるのは気のせいでしょうか?むしろ「世界の期待」を、自身のマーケティングに上手に活用して来たように感じるのですが。

 

アメリカ社会における人種差別を自分の言葉や経験で語れないのに訪問を受諾したのですから、政治的なマスコットとして扱われることはもちろん承知の上ですよね…?

自身の知名度を「良いこと」のために使う姿勢は素晴らしいですが、同時に(グラミー賞の本拠地たるアメリカにおいての)自身の売り込み・権威付けも狙っていますよね…?

 

このように、今までの(&特に近年の)BTSの活動と歌詞に大きなズレを感じるので、曲に説得力を感じないんですよ。むしろ白けるんですよ。ビジネス的なつじつま合わせをしているように見受けられて。

 

「王冠と花、数多くのトロフィー」を目指しての活動を否定する気は全くありません。ですがこの曲は、その活動の原動力の一部であるBTSの野心や野望やプライドを脱臭して、「ただ音楽が好き」「最高は照れ臭い」「慣れない修飾語」と歌う無垢なイメージに加工しているように聴こえてしまうんですよ。

 

そうする方が、甘やかできれいで耳触りがよくて、聴き手が思い出として脳内保存したくなる「BTSの過去」が出来上がりますもんね。その方が、花様年華で演出された「悩み傷つきながら前に進む少年像」と都合良くつじつまが合いますもんね。それを狙ってるんですよね?と邪推してしまうんですよ。

 

もちろん、メンバーがその無垢さを持っていることはある程度真実だと思います。ですが、それをここまで強く増幅させた歌詞を綴られると(私にはそう聴こえます)…「賞やトロフィーを得たい」と必死だったメンバーの姿が脳内に浮かんで、邪魔して来るんです。そのノイズの存在ゆえに、曲がリアルさ・説得力を持って私の胸に響かないんですよ。

 

正直、「音楽が好きだけど、売れたかったし認められたかったし、富も名声も名誉も欲しかった。そのために音楽以外でも色々やって来たし、実際売れてやったぜ。でももう次に行くよ!」と歌われる方が、個人的には余程気持ちが良いです…。

 

BTSの過去や現在を美しく演出して聴き手を騙すのは大いに結構、それがアイドルの仕事の1つなのですから。ただ、邪推がノイズにならないレベルにまで徹底的にやってほしいなあ…と思わずにはいられません。わかってます、わがままですよね。でも「騙すならもっとうまく騙してくれ」という気持ちが拭い切れないんですよ。

 

うーん。私だって邪推なんかしたくないし、この曲とMVで盛り上がりたかったんですけどね…。残念ながらそうはなれなかったので、BTS の次の楽曲に期待して待ちたいと思います。

花様年華と決別する決意をここまで前面に出して、「I just wanna see the next」と歌うのであれば、次が無い方が考えられない。だって、「The best is yet to come」なのだから。

 

そして感想は②に続きます。

②は2022 BTS FESTAの「真 防弾会食」を観た上で、自分が感じたことをふまえて感想を書きます。(なので私見・私情が①以上に入りまくる予定)「真 防弾会食」を観る前と後では、この曲とMVの感想ががらっと変わったので。

 

※画像はOfficial MVよりお借りしました。