ホームシック衛星2024(2/11 Kアリーナ横浜)感想 - そこにいると分かるように送ってくれて
※BUMP OF CHICKEN TOUR ホームシック衛星2024の初日、
2/11(日)Kアリーナ横浜で行われたライブの感想です。
※あくまで一個人の意見です(解釈、考察、妄想も多分に含みます)
※一部、BOCの演奏技術に関してネガティブな感想が含まれます。
ご覧になりたくない方は、このページは閉じて回れ右をしてくださいね!
---- ここから盛大にライブ内容のネタバレしています ----

セットリスト
01. 星の鳥
02. メーデー
03. 才悩人応援歌
04. ダイヤモンド
05. ハルジオン
06. ハンマーソングと痛みの塔
07. プラネタリウム
08. 花の名
09. arrows
10. 東京賛歌
11. 真っ赤な空を見ただろうか
12. かさぶたぶたぶ
13. アリア
14. 天体観測
15. 銀河鉄道
16. supernova
17. 星の鳥 reprise
18. カルマ
19. voyager+flyby
<ENCORE>
20. くだらない唄
21. BUMP OF CHICKENのテーマ
感想
結論を先に書くのがこのブログの通常フォーマットなのですが、今回はかなりの興奮状態できれいにまとめられそうもありません。悪文、乱文、長文ご容赦ください。
BOCのライブに行くとなぜかいつも涙が出てしまうのですが、今回は終始泣きっぱなしでした。オープニングで映像が流れ、王様と友人達が作ったBOCエンブレムに星の鳥が飛び込んで行く。その時点で、既に目の前は涙でくもってましたよ。王様よかったね、星の鳥は忘れずに来てくれたよ。
「メーデー」で、藤原基央氏がギターを揺らしながら「君にまた会いたくてここまで来たんだぜ。さあ、力を貸してくれ」と言う。藤原、泣かせに来とんのか。
そしてラストのvoyager+flyby。これが凄まじかった。藤原氏のギターでvoyagerが静かに始まり、原曲のまま進んで行きます。そしてflybyに入る前に間奏をはさむのですが、「はさむ」なんて言葉では片づけられない存在感に圧倒されました。voyagerが始まった途端に興奮状態になってしまい間奏の詳細は頭から吹っ飛んだのですが、転調しまくり・各楽器が荒ぶりまくりで。
orbital periodラストのflybyは離れて行く寂しさをどうしたって感じさせるのですが、この間奏が迎えに行くような印象さえ受けて。その寂しさがすくわれたように感じました。
そしてflybyの歌詞変え。ただでさえライブ中は涙が止まらない状態でしたが、この新しい歌詞で涙腺が完全崩壊しました。おそらく間違っている部分もありますが、変更された歌詞は概ねこんな感じだったような気がします(青字部分が変更箇所)
----------
ワタシハ ドンナニ離レテモ イツダッテ僕ノ 周回軌道上
アナタハ ドンナニ離レテモ イツダッテ君ノ 周回軌道上
応答願ウ
涙と雲の向こう 虹の隙間に目を凝らした*1
flyby きっとまた巡り合えると心の奥が信じてた
バイバイ 忘レテモ構ワナイ 忘レナイカラ
応答願ウ ズット 応答願ウ
ここにいることが分かるように メロディーヲ送ル
○月×日
本日モ通信試ミルガ 応答ハ無シ
アナタハ ドンナニ離レテモ 君ノ心ノ 周回軌道上
----------
藤原氏の「ここにいることが分かるように」が私の耳に届いた瞬間、心臓をわしづかみにされたような、喉の奥が詰まったような感覚に体をつかまれて感情はぐちゃぐちゃ、ついでに涙で顔もぐちゃぐちゃになりました。
私はずいぶん長いことBOCを聴いていますが、とある時期から彼らの活動の方向性(とそれに伴う楽曲の内容)がそれまでとは大きく変わったように思えて、「?」と感じていました。BOCを取り巻く色々な大人の事情なのか、それに対する藤原氏の考え方の変化なのか、おそらく両方なのでしょうねと思いつつ違和感は消えませんでしたし、今も完全には消えていません。
でも、藤原氏は多分ずっと、「ここにいることが分かるように」曲を送り出してくれていた。彼の言葉とメロディーができるだけ遠くまで届くよう、なるべく見つけやすく在るように唄ってくれていた。ずっと、ずっと。私が「?」と首をかしげて距離を置いた時も。そして今も。いつかまた、「応答願ウ」にこたえてくれる時が来ると願いと祈りを込めながら。
他人から見れば的外れな感想でも構わない。私の耳には、この日のflybyはそういう意味を持って届いたから。
そして藤原氏のこの唄い手としての在りようが、どうしようもなく悲しくて切ないと言うか、胸に迫るものがあって、号泣してしまった。
ありがとう。「ここにいることが分かるように」メロディーを送ってくれたおかげで、そこにいるって見つけることができたよ。
私のためでないことなんてわかってる。それでも、私の耳にも聴こえるよう唄ってくれたから、見つけやすい場所で光り続けていてくれたから、またあなたを見つけて巡り合うことができたよ。ありがとう。
これはきっと届かないだろうし、届いても伝わらない類のものだろうけれど。きっとBOCが、藤原氏が送ってくれたメロディーも、全てを見つけ切れていないだろうけれど。それでも、ありがとう。
その他、細かい感想は以下の通りです。
- 藤原氏の歌声は本当に素晴らしかったです。「少し苦しそうかな?」と感じる瞬間はあっても、そんなもんすぐにかき消される程度のノイズでしかありません。おそらく全曲、キーは原曲のままだったかと(半音下げた曲は無し)
- Kアリーナ横浜、とにかく音響が良かったです。藤原氏の声も、各楽器の音も本当にクリアーに聴こえました。その反面、ミスもわかりやすかったんですが…。特に藤原氏ではないギターの方が…。どうなんでしょう…個人的には…ちょっとつらいと感じるレベルのミスがけっこうあり…。何度かライブの没入感が消失→現実に引き戻されましたね…。
特に連続した単音を弾く際に、早弾きでもないのにどれかの音が突然ヘタれると言うか気が抜けた音になると言うか…前後の音と全く違うへにょ〜んとした音色になってしまうことが多く…。同様にアルペジオでも、音の粒が(良くない意味で)ものすごく不均等になる瞬間が割とあったような気がします…。 - MCはチャマがホテルのキーカードを失くした(でも後で見つかった)話など。全体的にMCは短かく、ライブ最後の藤原氏の話も「だいぶ汗かいて体がしっとりしてるんじゃない?インフルとか流行ってるから、あったかくして帰ってね」くらいで終わり。会場の時間が押していたんでしょうかね?
- voyager+flybyは、ツアー終了後に音源化してくれますよね?間奏もカットしませんよね!?
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*1:「虹の」が聞き取れずやや曖昧です。他の単語かもしれません。
The Post感想(ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書) - 画面から聞こえるのは、「オレの演出を見てくれ!」
脚本:リズ・ハンナ、ジョシュ・シンガー
日本公開日:2018年3月30日
あらすじ
ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国民の間に疑問や反戦の気運が高まっていた1971年。国防省がベトナム戦争に関する経過や客観的な分析を記録し、トップシークレットとなっていた文書、通称“ペンタゴン・ペーパーズ”の存在をNYタイムズがスクープ。
アメリカ初の女性新聞発行人として足固めをしようとしていたキャサリン・グラハム、そしてその部下である編集主幹ベン・ブラッドリーをはじめとするワシントン・ポスト紙の面々は、報道の自由を統制し記事を差し止めようとする政府と戦うため、ライバル紙であるNYタイムズと時に争いながら連携し、政府の圧力に屈することなく真実を世に出そうと決断する―。(Filmarksより)
---- ここから盛大にネタバレしています ----

とある「決断」が、映画最大のカタルシスになるまで
この映画は「報道の自由」が主題ですが、政治的な主張が強い内容ではないですし、ポリティカル・スリラーでもありません。主題をめぐる戦いを通して描かれる、主人公2人の成長。これが本作の見どころです。特に、メリル・ストリープ演じるキャサリン・グラハムの成長がキモ中のキモ。
上流階級の奥様(専業主婦)でしかなかった彼女は、夫の死によりワシントン・ポスト社のトップの座を仕方なく受け継ぎます。映画序盤の彼女は、100%男社会である役員会議ではビクビクで、発言もまともにできないほど自信ゼロ。部下である主幹編集者、ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)に強めに意見を主張されれば、うつむいて弱々しく言い返すしかできない。
そんなキャサリンですが、最終的には「トップ経営者」としての矜持を周囲に示せるまでに成長を遂げます。この成長過程でキャサリンが下した「とある決断」が、結果的に超保守的な男社会に一撃をお見舞いし、報道の自由を脅かす政府に対して反撃をかますことになるんですよ。これが、この映画最大のカタルシスです。
なので、「とある決断」を下すに至るシーンは超重要なわけでして。そして、ここでのスピルバーグ御大の演出が「絶品」の一言!以下、主要なカットごとに彼の演出を考察して行きましょう。












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Permission to Dance Official MV感想 - 正しい。でもモヤモヤする。でも応援はしたい。
BTS (방탄소년단) 'Permission to Dance' Official MV - YouTube

※あくまで一個人の感想です(解釈、考察、妄想も多分に含みます)
※"Permission to Dance"のMVについて、ネガティブな感想が書かれています。ご覧になりたくない方は、このページは閉じて回れ右してくださいね!
このMVでBTSが描くのは、COVID-19禍における希望のメッセージです。それはとても「正しい」行動だと思います。誰もがマスクを外して笑顔になりたいし、大切な人と触れ合いたいし、何の不安もなく楽しく踊りたい。それが容易に叶わない現状では、「もうすぐ叶うよ」と言ってくれる歌に癒されたいですよね、そりゃ。

COVID-19状況下で、より強く影響を受けたと言われる人達・市井のヒーロー/ヒロイン(いわゆるEssential wokersを含む)にスポットライトを当てる。これも非常に「正しい」姿勢ですよね。このMVでピックアップされているのは清掃員、教師、オフィスワーカー、配達員、外食サービスに携わる人々ですね。

そしてMVの登場人物が「ある程度の数の」人種で構成されていることも、「正しい」と思います。COVID-19のウィルスは肌の色なんてお構いなしに感染力を発揮しますし、人種に関係なくあらゆる人が影響を受けていますから。

そんな「正しさ」でコーティングされたMV。それを私は魅力的と感じたか?答はNOでした。理由は単純で、「正しさ」の表現が総じて中途半端に見えてしまったからです。
まず、MVが希望として指し示す「COVID-19の終息」。そこに至るにはまだまだ程遠く、それは”We don’t need to worry”と明るく歌って踊れるようなものではないと私は考えています。

ワクチン接種が進んだ国でも新たな変異株が登場し、再度ロックダウンに踏み切る・新たなワクチン開発を始動させる国が出始めています。医学とウイルスの追いかけっこはまだ終わっていません。
大切な人をCOVID-19で亡くした人もいます。他にも、感染して一命は取り留めたものの後遺症と戦っている人も。感染こそしなかったものの、経済的に・社会的に大きな影響を受けている人も。彼ら/彼女らの人生は今後もずっと続いて行くんです、COVID-19から受けた影響を抱えたままで…。だから思うんですよ、「終息」って、扱いがとても難しいものなんじゃないかな…と。
そんな考えの私から見たら、マスクが外れて踊れる日が来ればそれが「終息」であって…今はつらくてもいつかそうやって"land"できるから…と語るMVは…。「終息」の難しさに対する眼差しを欠いた、表面的なメッセージに聞こえてしまったんです。ゆえに、それは励ましとも癒しとも希望とも感じられず…胸に広がるのは虚しさばかりでした。

そしてスポットライトの当て方も、私にとっては何だか首をかしげたくなるものでした。Essential workers の最たる例である医療従事者はどこへ…?
いや、このMVが「単純に」市井で働く色々な人たちをモチーフにするだけなら、今のままでも全然良いんですよ。でも違いますよね?わざわざテーマにCOVID-19を持ってきておいて、かつそれに影響を受けたいくつかの職種(配達員・清掃員・外食サービス従事者等)は登場させているんですから。
にも関わらず、医療従事者は除外するのは…。職種の選択には製作陣の意図が何かあるんでしょうけど。
医療従事者なくして ”The wait is over”と歌い踊る意図って…どういうことだろう…?と疑問がぬぐい切れません…。

さらに、このMVは複数の人種を登場させることで、「世界の皆さん」を表現しようとしています。COVID-19禍にある「世界中の人々」に、この曲の聴き手になってほしいからでしょう。(歌詞が全て英語なのも、国際手話を振付に取り入れているのも、「そういうこと」ですよね?)
しかし…MVに登場しない人種が世界にはたくさんありますが…彼ら/彼女らはどこへ…?全人種は不可能だとしても、せめて中東系・インド/パキスタン系・東南アジア系・メキシカン/ラテン系だけでも入れて欲しかったですね…。
黒人・白人・東アジア系と中途半端に3つ位の人種だけ出演させて、多様な世界の人種(世界の皆さん)を表現しようとしているので、それに対する違和感がスルーできず…。曲が頭に入って来ませんでした…。

もっと突っ込むと、COVID-19という全世界的なテーマにも関わらず、MVがこんなにアメリカっぽいのはなぜ…?メンバーが演じるのはカウボーイなので、アメリカ西部の砂漠っぽい背景は理解できますが…。
カウボーイと関連が無い配達員のトラックまで、アメリカ郵政公社(US Postal Service)のそれと酷似してますよね。コインランドリーや学校内部も、明らかにアメリカ仕様ですし。

これだけ強く特定の1ヵ国を感じさせるMVに、世界の色々な都市・国の標識が出て来た時は、あまりの唐突さに面食らいました。まさか…この標識を登場させることで、グローバルなテーマだと強調しようとしているんでしょうか…?それ、アメリカンな背景と全くマッチしてませんが…。

まとめます。
「COVID-19」というテーマに対し、それを表現するパーツの扱い方が雑と言いますか…中途半端なMVと感じました。結果として、その中途半端さが悪目立ちしてしまい、MVが伝えるべき曲の良さにもBTSメンバーの魅力にも集中できませんでした。
ButterのMVでは、テーマを物語る演出のコントロールが細部まで見事に効いていたんですけどね。そのMVを世に出したのと同じチームの作品なのかな?これは?と一瞬疑ったくらいです。
このMVでは、「COVID-19の終息」「COVID-19に影響された人々」「世界中の人々(人種の多様性)」が重要な要素として配置されています。特に最初の2つは、それこそドキュメンタリー数本作れる位のものすごい質量を持っていると思います。
数分のMVでこれらを完璧に練り上げて表現しろとは言いませんし、これらがMVで大した役割を果たさないのであれば私も気にならなかったでしょう。
ですがMVのキーパーツとして機能させるのであれば、もう少しだけ丁寧に扱って欲しかったなあ…と…。一介のアイドルのMVにそこまで求めるのは酷だと言われれば、「そうですか、ごめんなさい」と返すしかありませんが…。
むしろ、この曲の内容と歌詞からして、COVID-19をMVの主題にする必要ってあったんですかね…?MVを見ずに曲だけ聴くと、「音楽を鳴らせ!踊ろう!許可なんていらないよ!」というシンプルな楽しさが光を放つ曲だと思うんですが…。その楽しさを、なぜCOVID-19という切り口から表現したのでしょう…?

本音を言えば、こんな邪推やモヤモヤは感じずMVを楽しみたかった…。そしてMVのメッセージと紐付かない状態で曲を聴いてみたかった…。ですが、困ったことにBTS自体は応援したいんですよ!BTSは好きなんですよ!
このMVにポジティブな感情をもらった人は多くいるでしょうし、それは本当に素敵なことだと思います。そんな風に、私もいつかこのMVを好きになれたらいいなあと願う気持ちも持っています。
BTSメンバーも、製作陣が固めたコンセプト・テーマの中で、彼らがベストと思うやり方で、演者として最善を尽くしているんでしょう。
製作陣も、中途半端(に私には見える)な正しさを使ってでも、BTSというプロジェクトで成し遂げなければならない何かがあるのかもしれません。(特にアメリカ向けの何か。これだけアメリカ風味なMVなので)
外野が何と言おうと「チームBTS」はそれに向かって進んで行くでしょうから、私は応援するのみですね。
※画像はOfficial MV、Official teaserよりお借りしました。
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Butter Official MV感想(カラーパート) - 色と衣装が描き出す、彼らのストーリー
BTS (방탄소년단) 'Butter' Official MV - YouTube

※あくまで一個人の感想です(解釈、考察、妄想も多分に含みます)
※以下の記事からの続きです。よろしければこちらを先にどうぞ!
Butter Official MV感想(白黒パート)- 華やか、鮮やか!色の世界への伏線 - 好きなものつめあわせ
はじめに:
ButterのMVは、37秒目から曲の終わりまで映像がカラーになります。このカラーパートは、画面内の配色を基準にすると、以下の5幕に大別できます。
- カラフル(白黒多め)
- カラフル(白黒少なめ)
- カラフル(白黒ゼロ)
- 白黒
- 黄&黒
また各幕の配色と連動して、衣装のタイプも変化します。まとめると以下の通りです。
で?だから?と思いますよね。いやいや!このMVは色合いと衣装で、各幕のBTSがどんな存在かを表現し、同時にMVの物語を非常にうまく展開して行くんですよ!では、各幕見て行きます。
第1幕:カラフル(白黒多め)/フォーマルスーツ
直前のモノトーン映像から、色の世界に切り替わりました。が、画面の配色は白と黒の存在感が強いまま。メンバーもハイファッションなスーツから変わらず、彼らが扮しているのはまだ「キメキメの泥棒さん」ですね。


第2幕:カラフル(白黒少なめ)/カジュアル
そしてホットケーキとバターの登場を合図に、白黒とカラーの主従関係が逆転する第2幕へ。色の構成比でカラーが勝るようになり、モノクロのスタイリッシュ感が薄まります。

同時に衣装もカジュアルダウン。JIN氏・j-hope氏は上着を脱いでシャツになり、RM氏・SUGA氏はラフなデザインのジャケットへ。JIMIN氏・V氏・JK氏もカラースーツに着替え、肩の力が抜けた印象に。

配色と服装の変化が物語るのは何か?まだ泥棒さんな彼らですが、スタイリッシュにキメていた前半よりも「スキ」が見え始めたよ!と伝えてくれているんですね。
その「スキあり男」の代表として登場し、MVの物語を動かすのはオレンジスーツのV氏。彼が乗り込むエレベーター、よーく見ると「下り」でして。V氏は下に行こうとしてるんですね。


でも彼が押したのは、ボタンの並びの中で一番上にある「A」…そう、ARMYです。このエレベーターのボタン、B1~B7・A・BTSロゴ・ARMYロゴなんですよ。もちろんB1~B7はBTSの7人、AはARMYを表しています。
で、V氏は下に行くはずが「A」を押してARMYのところに行っちゃって、泥棒さんの正体がBTSとバレてしまう事件が起きるんです。

ここからは事件が起こるまでの流れが描かれます。まずJIN氏が登場し、「顔くらい隠しなよ!」と言わんばかりにサングラスをV氏に投げ渡すと…


そのサングラスで顔を隠して、V氏はニヤリとひと笑い。白い光が画面を割りながらそれに重なります。この光はスクープされた時のフラッシュ撮影を表現しており、V氏のおどけた表情が意味するのは「BTSってわかっちゃった?」ですね。


「内緒だよ!」と口止めするカットも差し込まれ、正体が明るみになったことが強調されます(「やっべ、バレたー」的なひょうきんな表情の方もいますが…笑)

スクープを受けて、JIMIN氏が「泥棒さんの正体はBTSだよ!」と、記者会見でオフィシャルに発表。

第3幕:カラフル(白黒ゼロ)/ストリート
JIMIN氏が「紹介するね」とカーテンを開くと、BTSが登場!同時に、白黒はほぼ存在しないカラフルな世界にスイッチします。
衣装も色とりどりですが、JIMIN氏も髪をおろしレインボーカラーを画面に加えます。さらに背景も色の洪水。床は明るいグリーン、壁はベージュと黄土色(意図的にホットケーキ&バター色にしてますね)、ドアやシャッターは朱色ですから。

カラフルなジャージ・アクセサリー類の系統は、明らかにHip Hopまたはストリートダンス。BTSの「音楽とダンスの原点」を象徴しているのは間違いないでしょう。
背景の体育館?には、撮影機材・照明・録音機器・アンプが点在し、アイドルの仕事を連想させる小道具として機能しています。SUGA氏が歌うバックには、世界中を飛び回るアイドルには欠かせない飛行機をさりげなく見せることも忘れません。

つまりこの色味と衣装は、泥棒さんの正体を「Hip HopアイドルのBTS」だと描写しているんですね。カラフルなストリートウェアは、泥棒さんの白黒フォーマルスーツと対をなしています。
第4幕:白黒/ジェンダーレス
そして、RM氏の登場とともにカラフルな世界は終了。メンバーが人文字で「ARMY」と描く姿が映されます。衣装も背景もモノトーンで統一されているのですが…。

このMVは、服装がラフになるほど彼らは「泥棒さん」から遠くなり、BTSに近くなる演出の法則があります。でも他の4幕と比べ、ここでの彼らの描かれ方は異質なんですよ。なぜなら衣装はラフになったものの、その方向が「ジェンダーレス」だから。
説明しましょう。
直前のパートまで、彼らはいわゆる「男性的な服装」の範囲内で、フォーマル→カジュアル→ストリートへ着崩しています。でも、ここで初めて「男性的」から少し距離のあるフリル、レース、パール、オーガンジー等が施された服になります。JIN氏とV氏のボトムスなんてスカートっぽく見えますし。
「ステレオタイプな男らしさ」を薄めた衣装。かつこれを着ている時に彼らの支えである「ARMY」を登場させた…この2点から推測すると、第4幕での彼らは「BTSの思想」を体現しているんじゃないでしょうか?それはきっと、既存の固定概念に(ここでは”男らしさ”)臆さない決意と、ARMYと愛情を渡し合う関係でしょう。
第4幕でまとう白黒衣装は「BTSの信念の原点」であり、カラフルなストリートウェアが象徴する「BTSの音楽とダンスの原点」とはコントラストの構造なんですね。
第5幕:黄&黒/フォーマルスーツ
MVのクライマックスは、Butterの象徴である「黄&黒」の世界が展開されます。一度はBTSとして実の姿を明かしましたが、泥棒さんに再度変身!「これまでもあなたのハートを盗んできたけど、今度は溶かして頂いちゃいますよ♥♥」と宣言していますね。

BTSから泥棒さんに戻ったことは、第1幕の彼らが差し込まれる点からも明らか。第5幕では黄&黒、第1幕は白黒と色味こそ違えど、同じフォーマルスーツ(スタイリッシュな泥棒さんの象徴)ですから。


MVの中盤でBTSに姿を変えて、終盤で泥棒さん(歌詞にある"a criminal undercover"や”a robber")に戻る。物語が気持ちよく連環しています。
さてここで興味深いのは、最後の最後で第4幕のBTSが再登場すること。第3幕の「Hip Hopアイドル」を体現したカラフルな彼らは出て来ないんですよねぇ。何でだろ?


その理由をあえて深読みすると、「Butterではこれを前面に出して攻めるぜ!」とBTSが表明しているのでは?と感じます。
「これ」とはキメキメにかっこつけた彼らと、BTSの精神性。前者はスーツ姿の泥棒さんが体現し、後者のシンボルがジェンダーレスな服装のBTSですね。Hip Hopアイドルな彼らは、Butterでは控えめにするとか、裏バージョンで行く的な戦略なのかしら?あくまで妄想ですけど。ふふふ♥♥



まとめ:
かくしてMVは終幕を迎えます。いやあ~白黒パートに続き、カラーパートも楽し過ぎますね!
白黒パートは切れ味抜群のカット割りと、魅力的な白黒画面を作る技術に拍手喝采でした。一方のカラーパートは、色彩と衣装を語り部としてMVを展開させる手腕が冴え渡っています。好き!
服装にドレスアップ/ダウンと言う「上下の対比」だけでなく、ジェンダー/ジェンダーレスという「種類の対比」も加える。これにより被写体であるBTSに、泥棒さん/Hip Hopアイドル以外のストーリーがプラスされるんです。秀逸!大好き!
ButterのMVは画面内の動きも情報量も控えめで、スッキリしています。画面の作りも「視線の起点は中央」または「中央で画面2分割/左右対称」構造が徹底され、非常にシンプル。
だからこそ、色と衣装がとんでもないパワーを発揮するんでしょう。いや逆か。色と衣装が推進力となるよう、逆算して映像表現をシンプルに組み立てたんですかね?
まあいいや♥ 作り手&演じ手の愛情と気合が感じられる、非常に楽しいMVでした!
※画像はOfficial MVよりお借りしました。
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Butter Official MV感想(白黒パート)- 華やか、鮮やか!色の世界への伏線
BTS (방탄소년단) 'Butter' Official MV - YouTube

※あくまで一個人の感想です(解釈、考察、妄想も多分に含みます)
なぜ「冒頭が」白黒なのか?
いきなりですが、このMVが白黒で幕を開けるのは、2つ意味があると思います。
① まずは「ワルな泥棒さんとしてのBTS」をモノクロでスタイリッシュに演出するためでしょう。だって、ワルと言っても「あなたのハートを溶かして盗む罪なオトコ」であることが罪状ですから♥
かつ、それをオシャレに仕立て上げる小道具の1つが「マグショット(犯罪容疑者の写真)」。映画でよく見る古典的なマグショットは、白黒と相場が決まっています。それに合わせて、白黒パートを設けたのもあるんじゃないですかね?
② もう1つは、曲の中盤で白黒から「色の世界」に切り替えて、MVに変化を加えたかったのでは?と思います。要は曲始めの白黒パートは、そのための下準備ですね。
白黒の後にカラー映像が控えていること事前にバラしたくないからこそ、Official MVのサムネイルも白黒パートから取ったのでしょう。
このMVでBTSは「ハートを盗む泥棒さん(とその正体)」を実に色々な表情で演じています。そしてそれは、映像の色(白黒/カラー/黄&黒)・服装(フォーマル/カジュアル/ストリート)で明確に区別されていると思います。
その中で、白黒の映像と衣装は「フォーマルなスーツでスタイリッシュ」なBTSの表情を見せつつ、中盤以降に訪れるカラフルな世界への伏線としても機能しています。
JK氏パート
幕開けはJK氏。画面中央で歌う彼をメインに、隙間に色々なカットが差し込まれます(彼のパートは左右に視線を振る動きが多めですね)このカットの組み合わせが、小気味良くて実に気持ちいい!
以下、各カットを視線の方向/画面上の白黒の割合でたどって行きます。
1. 左→右(JK氏が移動)/白多め

2. 中央→周辺(JIMIN氏は中央で動かず、周りのメンバーが動く)/黒多め

3. 中央→右(JK氏の手の動き)/黒多め
この右手の位置が、次のカットへの視線誘導となっていますね。

4. 中央→右(V氏の視線&指、JK氏が移動)/白多め
直前のカットで右に誘導された視線に、またしても右方向へ動くJK氏が重なります。楽しい編集のしかけに胸がドキュン!

5. 中央&下→上(JK氏の手の動き)/白黒半々

6. 中央/白多め
カット5&6で目線を中央に戻して…

7. 右→左(メンバーの手の動き)/白黒半々
ここで左に目線を振ったら…

8. 中央右寄り/白多め
ここで目線を画面右寄りのJK氏にフォーカスし直します。この位置も、もちろん次のカットへの布石(視線誘導)です。

9. 左→右(JK氏の黒目の動き)/黒多め
直前のカットで右に誘導された我々の視線と、JK氏の黒目がここでバッチリ出会います。観ている側のハートを射抜くぜ!という監督の気合が感じられるカット構成。

10. 画面全体(中央で黒の集団の動き、周辺で白&黒の動き)/白多め

11. 周辺→中央(JK氏が上着を閉じる動き)/黒多め
直前のカットまで背景はほぼ白ですが、ここで初めて背景が黒に反転。

12. 中央&奥→手前(JK氏が躍りながら出てくる動き)/黒多め
黒背景がもう1カット続きます。「もうすぐV氏に変わるよ!」の予告でしょうね。黒背景に溶けつつ踊るJK氏の黒スーツの動きが美しい。

V氏パート
13. 中央/黒多め
そして手前に誘導された視線の中に、V氏がスッと入って来てボーカル交代。

14. 右→左(メンバーの首の動き)/白黒半々
ここでもう1度背景が白黒反転!背景が白に戻ります。

15. 中央&下→上(V氏の手の動き)/白多め

16. 中央&下→上(JIN氏の手の動き)/黒多め
さらにもう1度背景が白黒反転!背景が黒に戻ってJIN氏が登場。「次はJIN氏が来るよ!」の予告でしょう。黒背景に浮かぶ白スーツと、光(白)と影(黒)で映し出されたJIN氏のお顔が印象的。美しい影絵のようですね。

17. 中央→周辺(V氏を中心に放射上に黒→白に反転)
V氏の体の弾みに合わせて、再度背景が白黒反転!「JIN氏の前に、まだ今はオレの番だよ」と言わんばかりに背景を白に戻す、茶目っ気たっぷりな演出。

18. 中央/白多め
V氏を中心にすえた短いカットが2連発で差し込まれます。


19. 画面全体(メンバー全員がターン)/白黒半々
画面に点在する「黒」が回転する様が、白背景に映えます。

20. 中央/白多め
V氏を中心にすえた短いカットが、今度は3連発で入って来ます。
JK氏パートと比べて、V氏パートでは背景の白黒反転が増え、カットの連発挿入で画面が早く切り替ったりします。曲が進むにつれて、画面の動きも大きく&早くしている気がしますね。



21. 画面全体/白黒半々

JIN氏パート
22. 画面全体/黒とグレー中心
ここで背景が変わり(若干グレーに近い白になり、無地から文字&線ありへ)、ボーカルをJIN氏へバトンタッチ。直前のV氏パートはカットの切り替えが激しめだったのと対照的に、ここで画面の動きが落ち着きます。

23. 中央/グレー&真っ白
…と思ったら、画面全体の色がグレー&真っ白(マグショット撮影のフラッシュ)に瞬間的に切り替わる。この「色の点滅」が4人分連続します。


24. 画面中央(JIN氏のみ動く)/グレー多め
そして再びJIN氏を中央にすえた動きが少ない画面へ。直前のカットで画面を点滅させたので、ここで小休止でしょう。JIN氏パートは編集の緩急の付け方が実にニクい。

25. 画面全体(メンバー全員の手の動き)/黒とグレー中心
前のカットもですが、V氏は上着を脱いで黒担当からグレー担当に変わってますね。これにより、画面全体の白黒バランスが良い感じに。

26. ここで白黒からカラーの世界へスイッチ
直前のカットの手の動きに合わせて、スムーズなカットチェンジ!

白黒パート総括
時間にして約36秒しかありませんですが、いやあ~楽しいですね!
カットごとに白・黒・グレーが画面に占める割合が変わりますし、白背景の中で黒がどう動くか?逆に黒背景の中で白がどう動くか?もコロコロ変化する。
かつ、1カット内の動きの方向が多様なんですよ。右→左、下→上、奥→前…そのパターンも、目/手/首/体全体、1人で/2人で/メンバー全員、回転/直線…と実に多彩。
なので、白黒なのに画面がとても華やかで、観ていて飽きることがありません。
モノトーンの世界で「活きる」ように、メンバーの服装・小物や髪色・髪型が緻密に考えられている点も脱帽です。それによって画面で何が白/黒になるか、どんな質感の白/黒に見えるか、が決まりますからね。
さらに、世の中には様々な編集テクニックが存在しますが…画面を揺らしたり、カットにカットを重ねたり、他にも色々…。
この白黒パートは、意図的にそのテクニックの使用を抑えています(おそらく)。どこに何のカットを配置するかの采配と、白黒の見せ方含めたカットそのものの魅力だけで、鮮やかな映像を生み出しています。
これぞディレクションの妙技。堪能させて頂きました!
※画像はOfficial MVよりお借りしました。
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Still Breathing感想 - 生死の境で「まだ生きている」あなたへ
Green day
※歌詞/メロディー/編曲/その他 の4つの視点から、曲の感想を書く…はずでしたが、歌詞があまりにも心にぶっ刺さったので、今回は歌詞にフォーカスします。
※あくまで個人の感想です。
[歌詞]
この曲の主人公はGreen Dayのフロントマン・Billie Joe Armstrong氏です、おそらく。彼は自分の頭や心にあるものを歌詞に落とし込む楽曲製作スタイルですが、Still Breathingも例外ではないでしょう。
彼がね、歌うんですよ。体の底まで貫くような苦しみを経験しても、それに自分の世界を破壊されても、俺は前を向こうとすると。
前を向けないかもしれない危うさを自覚しながら、前を向く恐怖も感じながら、そのたびに「俺はまだ生きている」と確かめて、目線を前に戻すと。こんなの泣くに決まっているじゃないですか!ばか!
Verse1や2の歌詞には、生と死の境目に立っている人達や、そうでなくとも「あちら側」へ簡単に行ってしまいかねない人達がたくさん登場します。以下、一部抜粋して例を挙げます(意訳含む)
Asoldier coming home for the first time(戦争での兵役を終えて、帰って来た兵士)
A junkie tying off for the last time(これが最後だからと、麻薬の注射をするために腕を縛るドラッグ中毒者)
A loser that’s betting on his last dime(持ち金最後の10セントをギャンブルに賭ける負け犬)
Billie Joe氏は、そのすべてに”I’m like(俺は~みたいだ)”と付けています。つまり彼は「俺もこの人たちも同じだ。すぐ隣に死や闇がある」と歌っているんですね。
I’m like a soldier coming home for the first time
I’m like a junkie tying off for the last time
I’m like a loser that’s betting on his last dime
そしてそれに続く”Oh I’m still alive(ああ、俺はまだ生きている)”で、彼は自分が「あちら側」に行っていないことを再確認するんです。
でも「こちら側」も悲惨で、彼にとっては“wreckage”(破壊されまくった後の残骸)でしかない。なのに、そんな苦しみの象徴でしかない残骸の山でも、彼は”shine a light into the wreckage, so far away away”(光で照らすんだ、遠く、はるか遠くまで)とVerse2で歌う。なぜか?その答は以下のHookで明示されます。
Cause I’m still breathing(俺はまだ息をしているから)
Cause I’m still breathing on my own(俺はまだ自力で呼吸できているから)
My head’s above the rain and roses(悲しみも愛も受けとめて)※1
Making my way away(ここから離れるための道を)
Making my way to you(君へと続く道を俺は進むよ)※2
はい、この歌詞で私の涙腺は崩壊しましたよ。だってこれ、「死」に相当近い状態ですよ。(自分の呼吸を意識しないと、自分の生存確認ができないギリギリの状態)それでも「生」の方向へ行こうと・前に進もうとあがくんですよ。あがいた先にいる「君」に向かうために…って、泣かないのは無理でしょうよ!ばかばか!(2回目)
この「君」は特定の「誰か」かもしれないし、自分を支えてくれる「何か」という線もあり得ますし、「もう1人の自分」を指す可能性も考えられます。Billie Joe氏は解釈を聴く側に委ねてくれていると考えていいでしょう。なんにせよ、自分を「こちら側」にとどめてくれる誰か/何かには違いありません。
さらに、終盤(Bridge)の歌詞が私の喉の奥を締めつけてきます。
As I walked out on the ledge(俺がビルのへりに足を踏み出したように)
Are you scared to death to live?(お前、生きるのが死ぬほど怖いのか?)
1行目は、自殺未遂を示唆しています。高層ビルから飛び降りようとして、屋上の端にあるへりに立った状況ですね(Lyric videoでもそれが描写されています)。そこから空中に踏み出してしまえば簡単に死ぬことができる。そう、生と死を分ける距離はその「1歩」でしかありません。
そして2行目。そこまで生と死が近いと、生きることが死ぬほど怖いし、死ぬことが生きるのと同じくらい怖くなるんですよ。Billie Joe氏に「お前もそうか?」と問われて、Noと言えない自分に気づかされるんですよ。死ぬのは怖いけど、この現実を生きるのも怖い。本来は、死ぬことの方がずっと怖いはずなのに。
この部分を聴くたびに色々な感情がぐちゃっと混ざって、私は喉元をつかまれたような、苦しいような泣きたいような気持ちにさせられます。普段はのんきに普通に暮らしている私でも、死までの距離はほんのわずかと再認識させられるから。生きることと死ぬことのどちらがより怖いか、私も時々わからなくなるから。
そして、Billie Joe氏もそうだということに、彼がそれを歌ってくれたことに、少しだけ救われてしまうんです。身勝手なんですけど。
そして曲の最後。ここでも、やっぱり彼は”Cause I’m still breathing”と繰り返し歌います。生と死のギリギリの境界線で、怯えながら踏み出す一歩は「生」の方なんだと、何度も宣言するかのように。自分自身に言い聞かせるように。
誰が何と言おうと、その一歩が意味する決意を、私は美しいと思うんです。
[その他]
※1:"the rain and the roses"は完全に意訳でthe rain(雨)を悲しみ、the roses(バラ)を愛としています。the rain(雨)は痛みととらえてもいいような気がします。
冠詞がtheなので、特定の雨・特定のバラを指すんですよね。ゆえに、ここでの雨やバラはBillie Joe氏の特定の経験を表象・意味しているのではと考えます。
※2:この ”Make my way”は、既に出来上がった道を進むのではなく、道のないところに自分で道を作って/道を見つけながら進んで行くニュアンスを含みます。他の歌詞と組み合わせて考えると、個人的には「ガレキと残骸の山に足を取られつつ、苦労しながら進む」イメージが浮かびますね。
編曲について少しだけ…。Green Dayらしい非常にシンプルで大好きな編曲です。リズムも4分の4拍子で、コード進行もひねった部分はありません。IntroからVerse1まではギター音のみで、Verse2でベースとドラムが重なり、そしてHookでGreen Day節が炸裂!お家芸のキャッチーなコードとメロディーで、曲が耳にスッと入って来ます。この編曲のおかげで、歌詞はなかなか重苦しい内容ながら、最後まで聴ける曲になっているんでしょうね。(この歌詞で沈痛なコードやバラードだったら、ちょっと精神的にツラかったかも…)
最後に蛇足。個人的に、この曲で「Billie Joe氏は、やさしい歌詞を紡ぐようになったなあ」と感じました。DookieやInsomniacの頃からは考えられないくらいに。
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I Don’t Understand You感想 - 素直じゃなくて、澄んでいて、あまくて、つめたい
OK Go×Perfume
※歌詞/メロディー/編曲/その他 の4つの視点から、曲の感想を書いています。
※あくまで個人の感想です。
[歌詞]
リリースコメントで、OK GOのKulash氏は歌詞について以下の通りに語っています。もうこれが内容のすべてでしょう。
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文化の違いを面白おかしく描こうということで、そのまま「I Don't Understand You」(あなたのことは理解できない)というタイトルを付けました。そのアイデアをもう少し普遍的にするため、楽曲の中では、文化間の違いを男女間の恋愛トラブルに置き換えてみました。こうすることにより、楽曲に3つのストーリーができあがりました。男と女、日本とアメリカ、PerfumeとOK Goです。
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この3つのストーリーのどれであれ、この曲の主人公は「異なる考えを持っているがゆえに、相手を理解できないと感じている」2人ですね。(個人的には「男と女」をより強く感じる歌詞ですが)
その2人がお互いに繰り返す”I don’t understand you”が歌詞の大部分を占めています。そして、その合間にぽとりと落とされる日本語の歌詞。これがたまらんポイントです。特に曲の終盤で登場する( )内の言葉と言ったらもう!
I don’t understand you
(知らない)
I don’t understand you
(わからない)
I don’t understand you
(気づいて)
I don’t understand you
(欲しいの)
I don’t understand you
立派なミドルエイジ男性であるところの中田ヤスタカ氏…彼の頭の中で何がどうなったら、こんなにかわいらしい言葉を紡ぎ出せるのでしょう?私は女性ですが思いつきもしないわこんなん。
この曲の主人公は「あなたが理解できない」と相手に何度も叩きつけながら、同時に「自分のことは理解してほしい」と、(ちょっと一方的に)求めてもいるんですよね。こんな英語歌詞がありますしね。
“Won’t you say what you mean”(君が何を伝えたいのか言ってくれないの?)
“What do I have to tell you?” (僕は君に何を言えばいいの?)
“Can’t you just figure it out?”(君は僕の考えをわかってくれないの?)
“How long I’ve been waiting for you to give me a sign”(君がヒントをくれるのを僕がどれだけ待っているか)
これを中田ヤスタカ氏が日本語に変換すると、例の終盤の歌詞になるわけですよ。「知らない」「わからない」と顔をそむけるようなことを言っておきながら、自分のことは「気づいて」「欲しいの」って求めて来るわけですよ!こんなの「くぅ~!わがままぁ~!(喜)」とニヤニヤするしかないじゃないですか。ニヤニヤ誘発要因の1つは間違いなくPerfumeの声ですが(※[編曲]で後述)、もう1つはこのパートが「欲しくて」でも「欲しいわ」でもなく、「欲しいの」で閉じられていることです。
中田ヤスタカ氏は、「の」に何か明確な意図をこめたのかもしれません。それが何かはわかりませんが、この一文字があることで歌詞の意味が重層構造になるような気がするんですよ、私は。
「気づいて欲しいの」という願いと、「気づいて欲しいの?」という(投げかけた先は自分か相手かもわからないような)疑問が交差しているのかな?とか。かわいらしくにらんで来るような、同時に何かをせがむような…いくつかの感情が混ざった目線の女の子なのかな?とか。いや単に私の妄想なんですけど。そうやって表面的な意味以上の奥行きを邪推させられるの、気持ちよくないですか?(反語)
[メロディー]
Aメロ→Bメロ→サビ(Hook)→2番も同様→間奏→大サビの王道構成です。他は特にいうことなし!(笑)なぜならこの曲の個人的なツボはメロディーではないからです。いや、大前提としてこの曲のキャッチーなメロディー大好きですよ、もちろん。
[編曲]
で、私が最も「ぬお~」と身もだえするのは、Perfumeの加工された声と、その声で少しひねた言葉を歌わせる編曲の妙です。
Perfumeが歌う部分はすべて、3人の声を完全に重ねて(混ぜ合わせて)加工されています。誰か1~2人の声を使うのではなく、ハーモニーの中で誰か1~2人の声を立たせるわけでもなく。ゆえに、Perfumeののっち氏、かしゆか氏、あ~ちゃん氏は各人声質がまったく違いますが、聞こえてくる歌声から3人の「声の個性」は消されています。もうね、この加工された「声」が最高なんですよ。
とても女の子らしくて、やさしくて、甘やかな響き。3人の声を重ねているのにその響きに濁りはなくて、むしろ透明感だけが残る。そして透きとおっているのに、どこか無機質で冷たい。その冷たさも「冷涼感」や「凍てつく」ような尖りはなく、もっと穏やかでひんやりとした…あまりの透明度で深さがわからない水面のような感じです(超感覚的。伝わってくれ)
そしてこの声に「知らない」「わからない」「気づいて」「欲しいの」と歌わせるそのセンスたるや!
この曲の根底にあるのは、「あなたが理解できない」と自分は諦めておきながら、「自分のことは理解してほしい」と自分勝手に相手に求める「仄暗い欲望」です。この甘くて澄んだ、温度の無い声に乗っているからこそ、その欲望が魅力的に聴こえるんだと思います。まさに編曲の魔法ですね。
もっと甘さだけが強い声だったら無邪気な子供のわがままで終わりそうですし、より冷たさが勝る声であれば「理解できない」と突き放す印象ばかりが立ちそうですし。その声で歌われてもねぇ…。まあ、中田ヤスタカ氏は「歌詞やメロディーと合う声にしただけなんだけど」とか言いそうですけど。
[その他]
Perfumeが日本語歌詞を感情を抑えて/ぽとりと言葉を置くように歌っていることも、この曲の良さに一役買っていますよね!この歌詞を力強く歌い上げられたりしたら、私はちょっと違和感持ったような気がします。
例の日本語歌詞のなかで「知らない」だけ微かにディレイ?エコー?がかかってますね。いや気持ちいいんですけど、「わからない」「気づいて」「欲しいの」にはかかっていない…なぜだ?理由が無いわけないので、中田ヤスタカ氏に意図を聞いてみたいもんです。
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