BTS (방탄소년단) 'Butter' Official MV - YouTube
※あくまで一個人の感想です(解釈、考察、妄想も多分に含みます)
なぜ「冒頭が」白黒なのか?
いきなりですが、このMVが白黒で幕を開けるのは、2つ意味があると思います。
① まずは「ワルな泥棒さんとしてのBTS」をモノクロでスタイリッシュに演出するためでしょう。だって、ワルと言っても「あなたのハートを溶かして盗む罪なオトコ」であることが罪状ですから♥
かつ、それをオシャレに仕立て上げる小道具の1つが「マグショット(犯罪容疑者の写真)」。映画でよく見る古典的なマグショットは、白黒と相場が決まっています。それに合わせて、白黒パートを設けたのもあるんじゃないですかね?
② もう1つは、曲の中盤で白黒から「色の世界」に切り替えて、MVに変化を加えたかったのでは?と思います。要は曲始めの白黒パートは、そのための下準備ですね。
白黒の後にカラー映像が控えていること事前にバラしたくないからこそ、Official MVのサムネイルも白黒パートから取ったのでしょう。
このMVでBTSは「ハートを盗む泥棒さん(とその正体)」を実に色々な表情で演じています。そしてそれは、映像の色(白黒/カラー/黄&黒)・服装(フォーマル/カジュアル/ストリート)で明確に区別されていると思います。
その中で、白黒の映像と衣装は「フォーマルなスーツでスタイリッシュ」なBTSの表情を見せつつ、中盤以降に訪れるカラフルな世界への伏線としても機能しています。
JK氏パート
幕開けはJK氏。画面中央で歌う彼をメインに、隙間に色々なカットが差し込まれます(彼のパートは左右に視線を振る動きが多めですね)このカットの組み合わせが、小気味良くて実に気持ちいい!
以下、各カットを視線の方向/画面上の白黒の割合でたどって行きます。
1. 左→右(JK氏が移動)/白多め
2. 中央→周辺(JIMIN氏は中央で動かず、周りのメンバーが動く)/黒多め
3. 中央→右(JK氏の手の動き)/黒多め
この右手の位置が、次のカットへの視線誘導となっていますね。
4. 中央→右(V氏の視線&指、JK氏が移動)/白多め
直前のカットで右に誘導された視線に、またしても右方向へ動くJK氏が重なります。楽しい編集のしかけに胸がドキュン!
5. 中央&下→上(JK氏の手の動き)/白黒半々
6. 中央/白多め
カット5&6で目線を中央に戻して…
7. 右→左(メンバーの手の動き)/白黒半々
ここで左に目線を振ったら…
8. 中央右寄り/白多め
ここで目線を画面右寄りのJK氏にフォーカスし直します。この位置も、もちろん次のカットへの布石(視線誘導)です。
9. 左→右(JK氏の黒目の動き)/黒多め
直前のカットで右に誘導された我々の視線と、JK氏の黒目がここでバッチリ出会います。観ている側のハートを射抜くぜ!という監督の気合が感じられるカット構成。
10. 画面全体(中央で黒の集団の動き、周辺で白&黒の動き)/白多め
11. 周辺→中央(JK氏が上着を閉じる動き)/黒多め
直前のカットまで背景はほぼ白ですが、ここで初めて背景が黒に反転。
12. 中央&奥→手前(JK氏が躍りながら出てくる動き)/黒多め
黒背景がもう1カット続きます。「もうすぐV氏に変わるよ!」の予告でしょうね。黒背景に溶けつつ踊るJK氏の黒スーツの動きが美しい。
V氏パート
13. 中央/黒多め
そして手前に誘導された視線の中に、V氏がスッと入って来てボーカル交代。
14. 右→左(メンバーの首の動き)/白黒半々
ここでもう1度背景が白黒反転!背景が白に戻ります。
15. 中央&下→上(V氏の手の動き)/白多め
16. 中央&下→上(JIN氏の手の動き)/黒多め
さらにもう1度背景が白黒反転!背景が黒に戻ってJIN氏が登場。「次はJIN氏が来るよ!」の予告でしょう。黒背景に浮かぶ白スーツと、光(白)と影(黒)で映し出されたJIN氏のお顔が印象的。美しい影絵のようですね。
17. 中央→周辺(V氏を中心に放射上に黒→白に反転)
V氏の体の弾みに合わせて、再度背景が白黒反転!「JIN氏の前に、まだ今はオレの番だよ」と言わんばかりに背景を白に戻す、茶目っ気たっぷりな演出。
18. 中央/白多め
V氏を中心にすえた短いカットが2連発で差し込まれます。
19. 画面全体(メンバー全員がターン)/白黒半々
画面に点在する「黒」が回転する様が、白背景に映えます。
20. 中央/白多め
V氏を中心にすえた短いカットが、今度は3連発で入って来ます。
JK氏パートと比べて、V氏パートでは背景の白黒反転が増え、カットの連発挿入で画面が早く切り替ったりします。曲が進むにつれて、画面の動きも大きく&早くしている気がしますね。
21. 画面全体/白黒半々
JIN氏パート
22. 画面全体/黒とグレー中心
ここで背景が変わり(若干グレーに近い白になり、無地から文字&線ありへ)、ボーカルをJIN氏へバトンタッチ。直前のV氏パートはカットの切り替えが激しめだったのと対照的に、ここで画面の動きが落ち着きます。
23. 中央/グレー&真っ白
…と思ったら、画面全体の色がグレー&真っ白(マグショット撮影のフラッシュ)に瞬間的に切り替わる。この「色の点滅」が4人分連続します。
24. 画面中央(JIN氏のみ動く)/グレー多め
そして再びJIN氏を中央にすえた動きが少ない画面へ。直前のカットで画面を点滅させたので、ここで小休止でしょう。JIN氏パートは編集の緩急の付け方が実にニクい。
25. 画面全体(メンバー全員の手の動き)/黒とグレー中心
前のカットもですが、V氏は上着を脱いで黒担当からグレー担当に変わってますね。これにより、画面全体の白黒バランスが良い感じに。
26. ここで白黒からカラーの世界へスイッチ
直前のカットの手の動きに合わせて、スムーズなカットチェンジ!
白黒パート総括
時間にして約36秒しかありませんですが、いやあ~楽しいですね!
カットごとに白・黒・グレーが画面に占める割合が変わりますし、白背景の中で黒がどう動くか?逆に黒背景の中で白がどう動くか?もコロコロ変化する。
かつ、1カット内の動きの方向が多様なんですよ。右→左、下→上、奥→前…そのパターンも、目/手/首/体全体、1人で/2人で/メンバー全員、回転/直線…と実に多彩。
なので、白黒なのに画面がとても華やかで、観ていて飽きることがありません。
モノトーンの世界で「活きる」ように、メンバーの服装・小物や髪色・髪型が緻密に考えられている点も脱帽です。それによって画面で何が白/黒になるか、どんな質感の白/黒に見えるか、が決まりますからね。
さらに、世の中には様々な編集テクニックが存在しますが…画面を揺らしたり、カットにカットを重ねたり、他にも色々…。
この白黒パートは、意図的にそのテクニックの使用を抑えています(おそらく)。どこに何のカットを配置するかの采配と、白黒の見せ方含めたカットそのものの魅力だけで、鮮やかな映像を生み出しています。
これぞディレクションの妙技。堪能させて頂きました!
※画像はOfficial MVよりお借りしました。