好きなものつめあわせ

音楽、映画、漫画などの感想(駄文)を書き散らかします。

I Don’t Understand You感想 - 素直じゃなくて、澄んでいて、あまくて、つめたい

OK Go×Perfume 

※歌詞/メロディー/編曲/その他 の4つの視点から、曲の感想を書いています。

※あくまで個人の感想です。

 

[歌詞]

リリースコメントで、OK GOのKulash氏は歌詞について以下の通りに語っています。もうこれが内容のすべてでしょう。

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文化の違いを面白おかしく描こうということで、そのまま「I Don't Understand You」(あなたのことは理解できない)というタイトルを付けました。そのアイデアをもう少し普遍的にするため、楽曲の中では、文化間の違いを男女間の恋愛トラブルに置き換えてみました。こうすることにより、楽曲に3つのストーリーができあがりました。男と女、日本とアメリカ、PerfumeとOK Goです。

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この3つのストーリーのどれであれ、この曲の主人公は「異なる考えを持っているがゆえに、相手を理解できないと感じている」2人ですね。(個人的には「男と女」をより強く感じる歌詞ですが)

その2人がお互いに繰り返す”I don’t understand you”が歌詞の大部分を占めています。そして、その合間にぽとりと落とされる日本語の歌詞。これがたまらんポイントです。特に曲の終盤で登場する( )内の言葉と言ったらもう!

 

I don’t understand you

(知らない)

I don’t understand you

(わからない)

I don’t understand you

(気づいて)

I don’t understand you

(欲しいの)

I don’t understand you

 

立派なミドルエイジ男性であるところの中田ヤスタカ氏…彼の頭の中で何がどうなったら、こんなにかわいらしい言葉を紡ぎ出せるのでしょう?私は女性ですが思いつきもしないわこんなん。

 

この曲の主人公は「あなたが理解できない」と相手に何度も叩きつけながら、同時に「自分のことは理解してほしい」と、(ちょっと一方的に)求めてもいるんですよね。こんな英語歌詞がありますしね。

“Won’t you say what you mean”(君が何を伝えたいのか言ってくれないの?)

“What do I have to tell you?” (僕は君に何を言えばいいの?)

“Can’t you just figure it out?”(君は僕の考えをわかってくれないの?)

“How long I’ve been waiting for you to give me a sign”(君がヒントをくれるのを僕がどれだけ待っているか)

 

これを中田ヤスタカ氏が日本語に変換すると、例の終盤の歌詞になるわけですよ。「知らない」「わからない」と顔をそむけるようなことを言っておきながら、自分のことは「気づいて」「欲しいの」って求めて来るわけですよ!こんなの「くぅ~!わがままぁ~!(喜)」とニヤニヤするしかないじゃないですか。ニヤニヤ誘発要因の1つは間違いなくPerfumeの声ですが(※[編曲]で後述)、もう1つはこのパートが「欲しくて」でも「欲しいわ」でもなく、「欲しいの」で閉じられていることです。

 

中田ヤスタカ氏は、「の」に何か明確な意図をこめたのかもしれません。それが何かはわかりませんが、この一文字があることで歌詞の意味が重層構造になるような気がするんですよ、私は。

「気づいて欲しいの」という願いと、「気づいて欲しいの?」という(投げかけた先は自分か相手かもわからないような)疑問が交差しているのかな?とか。かわいらしくにらんで来るような、同時に何かをせがむような…いくつかの感情が混ざった目線の女の子なのかな?とか。いや単に私の妄想なんですけど。そうやって表面的な意味以上の奥行きを邪推させられるの、気持ちよくないですか?(反語)

 

[メロディー]

Aメロ→Bメロ→サビ(Hook)→2番も同様→間奏→大サビの王道構成です。他は特にいうことなし!(笑)なぜならこの曲の個人的なツボはメロディーではないからです。いや、大前提としてこの曲のキャッチーなメロディー大好きですよ、もちろん。

 

[編曲]

で、私が最も「ぬお~」と身もだえするのは、Perfumeの加工された声と、その声で少しひねた言葉を歌わせる編曲の妙です。

 

Perfumeが歌う部分はすべて、3人の声を完全に重ねて(混ぜ合わせて)加工されています。誰か1~2人の声を使うのではなく、ハーモニーの中で誰か1~2人の声を立たせるわけでもなく。ゆえに、Perfumeののっち氏、かしゆか氏、あ~ちゃん氏は各人声質がまったく違いますが、聞こえてくる歌声から3人の「声の個性」は消されています。もうね、この加工された「声」が最高なんですよ。

 

とても女の子らしくて、やさしくて、甘やかな響き。3人の声を重ねているのにその響きに濁りはなくて、むしろ透明感だけが残る。そして透きとおっているのに、どこか無機質で冷たい。その冷たさも「冷涼感」や「凍てつく」ような尖りはなく、もっと穏やかでひんやりとした…あまりの透明度で深さがわからない水面のような感じです(超感覚的。伝わってくれ)

 

そしてこの声に「知らない」「わからない」「気づいて」「欲しいの」と歌わせるそのセンスたるや!

 

この曲の根底にあるのは、「あなたが理解できない」と自分は諦めておきながら、「自分のことは理解してほしい」と自分勝手に相手に求める「仄暗い欲望」です。この甘くて澄んだ、温度の無い声に乗っているからこそ、その欲望が魅力的に聴こえるんだと思います。まさに編曲の魔法ですね。

 

もっと甘さだけが強い声だったら無邪気な子供のわがままで終わりそうですし、より冷たさが勝る声であれば「理解できない」と突き放す印象ばかりが立ちそうですし。その声で歌われてもねぇ…。まあ、中田ヤスタカ氏は「歌詞やメロディーと合う声にしただけなんだけど」とか言いそうですけど。

 

[その他]

Perfumeが日本語歌詞を感情を抑えて/ぽとりと言葉を置くように歌っていることも、この曲の良さに一役買っていますよね!この歌詞を力強く歌い上げられたりしたら、私はちょっと違和感持ったような気がします。

 

例の日本語歌詞のなかで「知らない」だけ微かにディレイ?エコー?がかかってますね。いや気持ちいいんですけど、「わからない」「気づいて」「欲しいの」にはかかっていない…なぜだ?理由が無いわけないので、中田ヤスタカ氏に意図を聞いてみたいもんです。